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BelfastUniversity

様々なステークホルダーによる協働は、GFSIにとって非常に重要なことです。小売業者の選抜グループによる協働から始まったGFSIも、今では私のような研究者を含め、食品の安全に取り組むすべての人々が関わるまでに成長しました。本年の世界食品安全会議、私は最初のプレナリー(本会議)で、食品安全に関し重要な発言をされてきた方々を代表し、学術研究の立場から考えを述べたいと思います。参加される業界の皆様が、学術的見地を心に留め置き、食品安全を一歩先へ進めてくだされば光栄です。

食品完全性の7原則

「浮世離れした人」という学者に対する一般的なイメージに反し、私は食品業界のプロフェッショナルとの対話を優先事項の一つとして活動してきました。その結果、産学連携の分野をリードするベルファストのクイーンズ大学に研究の場を得ることができました。クイーンズ大学グローバル・フード・セキュリティ研究所の初代所長として、世界中の食品業界のリーダー、政府機関、政策立案者と重要課題について話し合う機会に恵まれました。そういった対話を整理する中で生まれたのが、私の掲げる「食品完全性の7原則」です。それぞれの要点は次のとおりです。

  1. 日々食すものは安全であること
  2. 日々食すものは栄養価が高いこと
  3. 日々食すものは本物であること
  4. 食品は持続可能な方法で生産されていること
  5. 食品は最高の倫理基準にしたがって生産されていること
  6. 環境を大切にし、守っていくこと
  7. グローバルフードサプライシステムで働く人々が尊重されていること

これらの原則に取り組むと、7つの原則一つひとつが密接に関係しあっているだけでなく、ある原則に注力すると他の原則に反してしまう場合がある、ということに気づくでしょう。7原則すべてに従うためには、企業はサプライチェーンに関わるすべての人、環境そして原料について考慮しなければなりません。この講演では、7原則についてさらに詳しく述べ、稲作から香辛料の生産といった広い範囲において安全で持続可能な食品を守るためには、どのような方法で応用できるかをお伝えします。

食品産業主導の協働

Elliott GFSI2016学術研究の世界から楽観的に高い理想について語ることと、食品業界がこれらの原則を元に現場で食品安全を向上させるのは当然まったく別の話です。学術的な発見と、原則を導入することによって生じる食品業界とのズレは、至るところで見られます。というのも、要因は多岐に渡っており、研究を現場に反映することは困難だからです。研究者が現実世界のニーズではなく学問上の関心に基づいて自分の研究対象分野を選ぶことがこの問題の発端です。その一方で、グローバルフードシステムは驚くほど複雑ですが、現場で働く人々は誰よりも日常の現実を理解しているのです。

GFSIは、研究者と現場の人々のギャップを埋める手助けを目的として活動する団体の一つです。もう一つの団体に欧州イノベーション・技術機構の食品部門(EIT Food)があります。汎欧州の団体であり、食品安全を含む新しいアイデアを業界にもたらす役割を担っています。50あるEIT Foodの創設メンバー団体のうち、約35団体は食品業界で、残りは調査機関とクイーンズ大学のような学術機関です。私たちは食品業界の皆様が関心のある、またはよい機会となる分野を見つけ対話できるよう、この団体を設立しました。そして、課題に立ち向かい、機会を活かすために適切なイノベーションを見つけるというのが調査機関の仕事です。私はこのような産学連携のあり方が、この二者の間にいまも残る障害を取り除くカギであると考えます。

対話のはじまり

EIT Foodのように、世界食品安全会議には、より幅広いグローバルな視野を持った産業界や学術研究部門の枠を超えたステークホルダーが集まります。この会議は、食品産業主導の対話を始めるには最適な場です。産業界の参加者の皆様には、出席している研究者たちに働きかけ、一緒に日々の問題を話し合うことをお勧めします。このような出会いは、食品安全に関し、現実に応用できるイノベーションをもたらす関係の種となるでしょう。そして関係を発展させるためには、お互いの発想や文化を学ぶ必要があります。産業界は研究の背後に非常に長いプロセスがあることを知り、研究者は食品産業の複雑さを理解しようと努めなければなりません。

研究者にとって、世界食品安全会議は食品産業という世界を覗くことにより、理解を深めるチャンスです。これまで私がともに研究してきた学者の多くは、自身の研究が食品加工工場、食肉処理場、農場などに関係しているにもかかわらず、一度も訪問したことのない人たちでした。クイーンズ大学では、食品生産の全体像をより知るために、学生や研究員を産業の場に派遣し、数週間・数カ月続けて実地体験させます。学生時代にこのような機会がなかったあなたも、世界食品安全会議ではその一端を体験できます。プレナリー(本会議)やブレイクアウト(分科会)、ネットワーキング休憩などの場で、産業界の内情をよく知る人々は、私たちが日々口にしている食品の背後にある重層的なシステムを垣間見せてくれるでしょう。

ご自分の分野で経験豊富な方であっても、世界食品安全会議には食品産業の別の分野においてより知識豊富な人々がたくさん参加しています。教授と呼べそうな方々が1000人以上もいる会議の中では、あなたは一人の学生と言えます。さあ、ニースでは誰から何を学びましょうか?


Chris Elliott本ブログはこちらの方にご執筆、ご寄稿いただきました。

Professor Chris Elliot (クリス・エリオット教授)
クイーンズ大学、食品安全、グローバル・フード・セキュリティ研究所 創設者

世界食品安全会議2019 プレナリー(本会議)講演者